毎日新聞 2011年8月1日 2時31分
社説:改正障害者基本法 評価できる点は多い
障がい者制度改革推進会議は民主党政権の目玉機関の一つだ。「私たちのことは、私たち抜きで決めるな」を合言葉に、官僚主導ではなく障害者自身が制度を作るというのだ。改正自立支援法や虐待防止法も相次いで成立したが、これらは旧政権からの法案であり、改正障害者基本法こそが推進会議の初仕事である。
改正法は、障害定義を広くして制度の隙間(すきま)をなくし、施設や病院よりも地域での生活を基本とするなど、理念は評価すべきものが多い。手話は言語であることも初めて法律に明記された。障害者も入る「政策委員会」を設置し、障害者基本計画の実施状況を監視し首相に勧告できる仕組みも導入された。
個別分野では「司法手続き」と「選挙」が注目される。刑事事件で障害者が判断能力の弱さにつけ込まれて自白調書を取られて冤罪(えんざい)事件になったケースが数々ある。改正法では個々の障害者の特性に応じた意思疎通の手段の確保、関係職員の研修などを義務づけた。また、障害者が選挙権を行使できるように配慮することも盛り込まれた。一方、医療、教育、労働の分野はめぼしい内容が少なく、推進会議内でも「30点程度の内容だ」との酷評が聞かれる。
「合理的配慮」も注目された。車いすの人が公平に入社試験を受けて採用されても職場が段差だらけでは働くことが制限される。このようなケースは間接差別とされ会社に合理的配慮義務を課すことが世界的な潮流だが、国内では経済界などからの警戒が強い。改正法では「合理的な配慮」という表現で玉虫色の決着となった。また、条文の各所に「可能な限り」という言葉が登場することも懸念点として挙げられる。総論では障害者への配慮をうたいながら、現実には財政の制約などを理由に不可能とされるのではないかとの不信が障害者の間に広がっている。
全体的に見ると斬新な改革が随所にあるものの、推進会議が当初まとめた原案からは大幅に後退したのも事実だ。権利を前面に打ち出した原案に各省庁は警戒を強め、政府案としてまとめる中で現実的な内容に引き戻したためだ。現在、自立支援法に代わる「障害者総合福祉法」「障害者差別禁止法」も論議が進んでいる。基本法より財源と直結する制度改革である。政府内には現実離れした案になるのではないかと懸念が広がっている。障害者側の不満もわかるが、国民全体が寄せた税金をどう使うかは「私たち(障害者)」だけで決められるわけではない。
改正基本法の成果と教訓をどう障害者側が受け止めるか、民主党の政治主導は本当に発揮されるのか。真価が問われるのはこれからだ。
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